シャントエコーを始めたばかりです。エコー画像が上手く取れません。時間もかかります。エコーを上達するにはどうしたら良いでしょうか?
こんな疑問を解決します。
まず、結論は下記の通りです。
- 臨床症状・理学初見を丁寧に行う。
- 再現性にこだわる。
- シャントの走行図を作成する。
- 見やすい綺麗な画像を心がける。
- 施設内でルールを統一する。
記事の信頼性
- 総合病院に勤務の現役臨床工学技士。
- 透析業務を主な業務としており、シャントエコー歴2年。
- シャントエコーに関する論文や勉強会に積極的に参加中。
想定読者
シャントエコーの技術を高めたい方。シャントエコーに興味のある方。
この記事を書いている僕は、シャントエコー歴2年の臨床工学技士です。
今回は、『【極秘】現役臨床工学技士が教えるシャントエコー上達法』というテーマで、解説していきます。
私は、シャントエコーを始めて2年が経ちますが、上達するまでかなりの時間がかかりました。初めの頃は、1時間かけてシャントエコーしてしまい、よく怒られました、、、
そんな私ですが、多くの先輩からのアドバイスや勉強会などで、シャントエコーの上達法について教えてもらいました。
それを実践していくことで、私自身かなり上達することができました。
今では、私が施設内で1番シャントエコーが上手いと自負しています!!(実際には怖くて言えません笑)
今回は、私が学んだシャントエコーの上達法について、解説していきたいと思います。
※シャントエコーの経験がない方でも、理解できるように解説していますが、わかりにくい部分があるかも知れません。下記の本は、シャントエコーの全体像がわかる一冊です。この記事のお供にオススメです!
私も、シャントエコーを始めたての頃はよく読んでいました。知識0の方でも、読みやすく分かりやすいです。
前置きはさておきですね。
では、いきましょう( ゚д゚)
【極秘】現役臨床工学技士が教えるシャントエコー上達法
結論、上達するためには下記の4つが重要です。
- 臨床症状・理学初見を丁寧に行う。
- 再現性にこだわる
- シャントの走行図を作成する。
- 見やすい綺麗な画像を心がける。
- 施設内でルールの統一。
上記の4つを意識しましょう!
それぞれ解説していく前に、シャントエコーの流れについて簡単に説明します。
シャントエコーの流れ
流れは下記の通りです。
- シャントの視診、聴診、触診を行う。
- 機能評価(FV、RIの測定)
- 形態評価(血管径の計測)
まずは、シャントの状態を「見て、聞いて、触って」確認します。
これが、とても重要だったりします。
その後に、シャントエコーでFV、RIの測定を行い、シャント全体(吻合部から上腕or鎖骨下静脈まで)を観察していきます。
では、シャントエコー上達法について詳しく解説していきます。
臨床症状・理学初見を丁寧に
まずは、こちらです。
エコーを行う前に臨床症状・理学初見を丁寧に行いましょう。
臨床症状とは、下記のような症状です。症状ごとに観察するポイントも載せています。
上記のような症状があるからシャントエコーを実施し、原因を追求するわけです!
臨床症状の原因となる病変を追求する。
そのために、「視診、聴診、触診」がとても重要です。
この3つを行い、病変部を推測しましょう!
これがエコー実施時間の短縮や狭窄の見逃し防止、診断能力の向上に繋がります。
エコー前に「視診、聴診、触診」で病変部を推測する。時間短縮・診断能力向上に繋がる。
すぐに、プローブにゼリーをつけてエコーをするのではなく、十分に時間をとってエコーを行いましょう。
意外にも「視診、聴診、触診」がおざなりになりがちです。←私の実体験含め
では、どのような理学初見に気をつけなければならないのでしょうか?
一例として、下記のような初見です。
その他にも、様々な症状・初見がありますが今回は割愛します。
再現性にこだわる【機能評価(FV、RIの測定)】
続いて、再現性にこだわりましょう。こだわる理由は下記の通りです。
測定値(FV、RI)の信頼性を上げ、精度の高い検査にするため。
FV・RIの測定は、同じ部位もしくは違う部位で数回測定を行うと思います。
ここで皆さんに質問ですが、1回目と2回目の測定でFVにどのくらいのズレがありますか?
FV500mL/min未満の患者で、測定値が100mL/min以上ズレたりしてませんか?(※測定場所によっては大きく異なることもあります。)
同じ条件で、測定値に大きなズレがあると、その測定値の信頼性は下がり、精度の低い検査になってしまいます。
また、測定者の違いによる大きなズレも信頼性に欠けます。
例えば、同じ患者のFVを測定した時に、A君は350mL/min、B君は470mL/minの結果だったとします。これだと、同じ狭窄結果でも診断評価が異なりますよね。
この測定値のズレ、つまり測定誤差を減らしていくことが上達の秘訣です。
目安としては下記の通りです。
表のように、測定誤差を小さくしていきましょう。
次に、再現性を上げる方法について解説します。
再現性を高くする方法
再現性を高くする方法は下記の通りです。
- 血管の蛇行部位を避ける(肘など)
- 石灰化していない部位を選ぶ
- 血管の3層構造を明瞭化できる部位を選ぶ
- 正円の部位を選ぶ
- 血流速波形は層流で計測する
- 血管径を拡大して計測する
1〜4項目目までは、測定部位の決め方です。再現性を高くするためには、測定部位の選択がとても重要です。
それぞれ解説します。
血管の蛇行部位を避ける理由
これは、乱流波形になりやすいからです。
層流と乱流は以下のような波形です。
層流波形
乱流波形
FVの測定では、層流波形が望ましいです。
特に、肘などは蛇行しており乱流になりやすいです。可能な限り上腕で測定しましょう!
石灰化していない部位を選択する理由
これは、超音波(パルス波)が伝わりにくく、測定誤差の原因になるからです。
そのため、石灰化の強い患者には、カラードプラを用いカラーがのる位置で測定しましょう!
血管の3層構造を明瞭化できる部位
これは、血管の正中で測定するためです。
正中で測定する理由は、2つあります。
1つ目は、最大流速で測定するためです。
2つ目は、正しい断面積で測定するためです。
引用:臨床工学技士国家試験第20回午後第75問
上の図は、層流波形です。血管内の正中で流速が最大となっています。
FVは、以下の式で求められます。
FV (mL/min) = TAV (cm/s) × Area (mm2) × 60 ÷ 100
TAV (cm/s):時間平均血流速度、Area (mm2):断面積
つまり、平均血流速度からFVが算出されるため、血流が比較的安定した部位(層流波形)で測定する必要性があります。
また断面積からもFVが算出されます。
血管正中から、プローブが少しでもズレると、断面積を過小評価してしまい、測定誤差につながります。
血管正中を捉えることができると、血管壁を明瞭に抽出することができます。
血管の正円を選ぶ理由
こちらも、FV算出式で断面積は正円と仮定されているためです。
楕円ではなく、正円の部位を選びましょう。
血管径を拡大して計測する
こちらは、正確に血管径を測定するためです。
くどいようですが、FVは断面積から算出されるため、正確に測定しましょう!
シャント走行マップの作成【形態評価】
続いて、シャント走行マップを作成しましょう!
シャント走行マップを作成するメリットは下記の通りです。
特に、シャントエコーを始めたての方にとって、有益な方法です!
シャント血管は下記のような走行だと思います。(雑で汚くてすみません。これでも頑張って書きました。)
多くは、橈骨動脈と橈側皮静脈の吻合が多いと思います。
そして、メインルートの他に、手背枝や側路にも血流が流れています。
この、側路や側副血行路などもエコーで確認しましょう。
そして、エコーが終わった後に、血管の走行マップを書き、患者の造影画像などがあれば、それと見比べることで、どこまで血管を理解できたか分かります。
この、比較が大切です。自分のシャントエコーの実力が分かります。
エコーで撮ったシャント血管像と造影画像が近づけていくことが上達の秘訣です。
医師が判断しやすい画像を心がける【形態評価】
続いて、こちらです。
画像を見たときに、すぐに判断できる画像の撮影を心掛けましょう!
画像を見て、最終的にシャントを診断するのは医師です。
そのため、医師や第3者が見た時に、綺麗で見やすく分かりやすい画像が望ましいです。
上記のような画像を撮るコツは、下記の通りです。
- ゲインとフォーカスを最適にする。
- プローブを押し付けすぎない。
- 角度を変えて血管を見る。
それぞれ解説していきます。
ゲインとフォーカスを最適にする
まず、『ゲイン』と『フォーカス』の意味は、下記の通りです。
『ゲイン』とは、『輝度』の事で、画像の明るさを表します。
『フォーカス』とは、『焦点』の事で、画像の焦点を表します。
この2点を調整し、綺麗で医師が判別しやすい画像を映し出します。
ゲインの最適な調整方法は、『血管内や血管外の組織も明瞭にみえる値』が望ましいです。
私の施設で、ゲイン60程度が明瞭に写せます。
フォーカスの最適な調整方法は、『対象となる血管が明瞭にみえる値』が望ましいです。
フォーカスの位置は、血管の後壁に合わせると綺麗に写せます。
プローブを押し付けすぎない
題の通りです。
エコープローブを押しつぶさないように撮像しましょう!
ポイントは、ゼリーをたっぷり使って、プローブを浮かせることです。
下記画像のように行うことが望ましいです。
正確な血管径を得ることができます。
角度を変えて血管を見る
血管をみるときに、角度を変えましょう。
角度を変えることで、静脈弁や石灰化、血栓を綺麗に写すことができます。
施設内でルールを統一する
こちらが最後になります。
手技的な面ではないですが、とても重要です。
ここまで色々な上達方法を解説しましたが、シャントエコーは、自分だけが行うわけではありません。他のスタッフも行います。
そして、その施設内の独自のルールがあると思います。私の施設では、エコー画像の右側が吻合側になるよう決めています。
つまり、施設内でルールを統一しなければ、どんなにシャントエコーのスキルが上達しても、意味がありません。
知識は共有していきましょう!
おすすめのシャントエコー上達本
ここまで、5つのシャントエコー上達法について解説しました。
この5つは、私が今まで学んだこと中で重要だなぁと思った点を解説しました。
ですが、私が感じなかっただけで、今まで学んだ中で重要な部分が抜け落ちているかも知れません。
また、現時点のシャントエコーの知識・スキルによって、必要な情報は異なると思います。
そんな方のために、さらなる上達方法やエコー技術を高める方法について解説します。
それは、本を読むことです!!!
本をオススメする理由は、知らない知識を補うだけでなく、物事をより深く理解するためです。
『最高の本とは、あなたが既に知っていることを教えてくれるものである。』
ジョージ・オーウェル
これは、イギリスの作家のジョージ・オーウェルさんが残した名言です。
この意味は、良い本からは新しい情報だけではなく、読者の持つ知識や経験を豊かにし、より深く理解する手助けをしてくれるよっ!という意味です。
ですので、私は最高の本をオススメしています!
最高の本は、下記の2つです。
特にオススメ
シャントエコーについて、網羅的に解説されており、初学者もベテランの方にもおすすめです。シャントエコーがやりたくてたまらなくなる一冊です。
シャントエコーを学びたての方にオススメ!
2つ目は、冒頭でご紹介した本です。
こちらは、シャントエコーの基礎的な点が網羅されており、この本を読むだけで、ある程度シャントエコーについて理解することができます。
これからシャントエコーをやっていくぞ!という方は、まずこの本がオススメです。
まとめ
今回は『【極秘】現役臨床工学技士が教えるシャントエコー上達法』というテーマで解説しました。
結論は下記の通りです。
- 臨床症状・理学初見を丁寧に行う。
- 再現性にこだわる。
- シャントの走行図を作成する。
- 見やすい綺麗な画像を心がける。
- 施設内でルールを統一する。
上記の5つの上達方法を解説しましたが、『結局は、実践あるのみ』です。
どんなに、知識を入れてもそれを実施しなければ意味がありません。
学んだことをアウトプットしていきましょう!目指せ達人です!
というわけで、今回は以上です!
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